【過去録】焼石岳 天竺沢 遡行記録

思い出の天竺沢 往時の山行報告書を見返す機会がたまにあるのだが、20・30 年も前の報告書を読み返したとき、記憶のデータからそのときの場面がどうしても浮かんでこないものがある半面、 報告書のファイルに見つけられないのだが、ルートやその時の心情が記憶に鮮明に残って いる山行もある。今回はその一つ、S氏と行った夏の天竺沢のことを綴ってみました。
その夏は、カラカラ天気が続いていて、沢登、特に天竺沢の遡行にはこの上ない絶好の 機会でした。実はその一年前にやはりS氏と天竺沢を計画したものの水量が多くて天竺沢 を直登できないことが予測できたので尿前本沢から二人で引き返してきた経緯があります。
中沼の駐車場から金明水に行くルートを辿り、まずは尿前本沢に降りる。ここから 1.5 キロメートルほど左岸をメインにして下降する。一か所大きな釜があり、左岸の土付きの 壁を高巻く個所にちょっと足がすくむとろである。このちょっと先に 左から尿前本沢に注ぎ込む支流が現れるがこれが天竺沢をメインと した沢の流れである。本沢との合流点から 400 メートルほど行くで あろうか。左側に突然トイ状のF1が姿を現す。ちょっと見には、 ツルっとして難しそうに見えるが、よく見れば左岸には細かいホー ルドが適当にあります。

F2はスラブ状の滝です。左側を気持ちよく登ることができます。
天竺沢の遡行図や当時の胆沢町の観光パンフレットを見ますと、 一番大きな滝がF4と記載されています。しかし、遡行してみると 小滝を除いて滝は5つ6つあります。多分私がF3として記載して いる個所は崩壊地であるがゆえに、相当以前は簡単に通過できた個 所なのでしょう。事実、その数年後にK氏を交えた3人で遡行した 際には、F3の個所はまたまた、滝の位置が変化していました。と もあれ、当時は合羽のフードを被り豪快なシャワークライミングでF3を通過しました。

F4は左から豪快に垂直に落ちている滝です。7-8メートルほどの高さです。その上 は結構斜度のあるトイ状のナメ滝です。下の写真はS氏と遡行したカラカラ天気のときと数年後にK氏を交えて遡行した時の写真ですが水量の違いが一目瞭然です。

さて、このF4を通過しほどなく行くと、天竺沢の核心部であるF5が現れます。

一般 的にはというか当時私の耳に入っていたのは、写真からもわかるように白い筋が斜上して
いる広いバンドがあります。その個所をずぶ濡れになりながら通過するのが一般的でした。 滝を直登した話は、石鳥谷のO氏が人口登攀で左側の岩壁を抜けたということは知ってい ました。地元にいるからこそ、水量の少ない時期を狙ってのフリーでの直登です。
S氏がトップです。私の腰くらい のところにちょうどリスがあり、
ハーケンを打ちこんでビレーをと り、S氏がテラス状の岩に強引に 体を移動させます。水量の多い写 真の滝の落ちる右側の筋に沿うよ うに、細いバンドが走っています ので、水量が無ければ流れに圧倒されることはありません。○の位 置付近で、1ピッチを切って、私が の登攀です。大きなテラスに上がると何とハーケンとかなり古ぼけたシュリングがあるではありませんか。以前にもこのルー トをチャレンジした山屋がいたのです。感激です。ホールドもスタンスもしっかりしてい ますが、何せ水の流れもいささかあるのでスリップだけは要注意、S氏が確保している地 点まで到達し、ビレーの交代です。S氏は滝の落ち口を狙ってザイルを延ばしていきます。
実は、S氏この1週間ほど前に単独でこのルートを登ったというのです。なんと無謀な ことをと思いましたし、俺だったら絶対一人では来ないなぁと思った次第です。
S氏が滝を登り切りしばらくして、コールがあったのでビレーを解除して登攀開始です。 2ピッチは距離はないのですがスタンスが小さくまた、ちょっとハング気味のところもあ り気が抜けないところです。ここはちょっと焦りました。俺はこのルートでトップやるん だったら1か所ボルトが必要と感じました。それでも、最後は滝の落ち口の先にある岩の 割れ目に手を突っ込んでフリクションで強引に体を水平な場所に持っていき登攀終了とな りました。

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